倒産防止共済とは
得意先が倒産して売上代金等が回収不能となった時、または運転資金が足りなくなった時に、無担保・無保証人で借入れできる制度です。
毎月の掛金は損金(法人)、または必要経費(個人事業主)に算入できます。
また、前納制度もあり、1年以内の先払い分まで損金(法人)、または必要経費(個人事業主)に算入できます。
なお、掛金は月額5,000円から200,000円の範囲で、5,000円単位で設定できます。
倒産防止共済の貸付制度(契約者が借りる制度)について
貸付制度は借入理由によって、以下の2種類があります。
- 共済金貸付制度(得意先が倒産した時)
- 一時貸付金制度(運転資金が不足した時)
共済金貸付は、得意先が倒産して、売上代金等が回収困難となった時に、売上代金等の額と掛金総額(前納分除く)の10倍に相当する額(最高8,000万円)のいずれか少ない額の範囲内で、借入れができる制度です。
また、利息という表現はしておりませんが、借入額の10分の1に相当する金額が、今まで積立ててきた金額から徴収されます。
一時貸付金は、運転資金が必要となった場合に、機構解約時に支給される解約手当金の95%を上限として借入れできる制度です。(下記の表を参照してください)
なお、利息は変動しますが、令和6年4月1日時点の利率は、年0.9%となります。
解約事由 | 解約の種類 |
---|---|
契約者の任意解除 | 任意解約 |
個人事業主の死亡 | みなし解約 |
会社等法人の解散 | みなし解約 |
事業譲渡 | みなし解約 |
会社等法人の分割 | みなし解約 |
機構側が行う解除(掛金滞納など) | 機構解約 |
納付月数 | 任意解約 | みなし解約 | 機構解約 |
---|---|---|---|
1ヶ月~11ヶ月 | 0% | 0% | 0% |
12ヶ月~23ヶ月 | 80% | 85% | 75% |
24ヶ月~29ヶ月 | 85% | 90% | 80% |
30ヶ月~35ヶ月 | 90% | 95% | 85% |
36ヶ月~39ヶ月 | 95% | 100% | 90% |
40ヶ月~ | 100% | 100% | 95% |
倒産防止共済が人気の理由
掛金の滞納がなければ、契約後40ヶ月で解約返戻率が100%(任意解約)となることにあります。
そこまで長くない期間で解約返戻率が100%となるため、節税を行いながら、積立ても行えることで人気があります。
- 期間が1年未満の場合、掛金は掛け捨てになりますので、注意が必要です。
期間が1年以上になると、そこで返戻率がつき、契約期間が40ヶ月に近づくにつれて段階的に増えていきます。
なお、みなし解約は、36ヶ月で返戻率が100%になります。 - 積立てられる金額は、最高で800万円までです。
解約の時期は、加入者の任意になります。
800万円まで積立てた後、解約せずに積立てたまま置いておくことも可能です。
また、1年以内の先払いであれば、支出した事業年度において、損金(法人)、または必要経費(個人事業主)に算入できるので、期末直前の決算対策としても人気があります。
税制改正について
改正では、共済契約を一度解約して、また再度契約を締結した場合、その解約した日から2年を経過する日までの間に支出した掛金については、法人税法上、損金算入ができなくなります。
所得税についても同様の取扱いになります。
改正は、令和6年10月1日以後の共済契約の解約について適用される予定です。
よって、解約後2年間の間に支出した金額は、今後、節税対策に利用できなくなります。
ただ、再加入は今までどおり行えます。
今回の改正理由について
今回の改正は、加入目的が共済の本来の目的にそったものではなく、税制優遇を理由に加入する行動が多くみられたことにあるようです。
中小企業庁が作成したアンケート結果によると、加入理由の30%が税制優遇だったそうです。
また、税理士や社会保険労務士などの専門家のアドバイスを受けて加入した割合もそれに近い数字となり、約60%近い加入者が税制優遇を目的としていることが推測できます。
なお、再加入者の約80%が解約後2年未満の間に再加入しているという結果も出ています。
共済の本来の目的は、得意先が倒産した際に、連鎖倒産や経営難に陥ることを防止することにあり、そのために経済産業省の下部組織である中小企業庁に掛金を積立てていくのが、倒産防止共済のシステムです。もしもの時の積立てであるのに、解約後にすぐ再加入し、また一から積立てなおす行動は不自然と思われてもしょうがないでしょう。
ただ、この制度を将来起こり得る支出の積立てとして利用することについては、一考する価値があると思います。 例えば、将来の設備投資や退職準備金を目的とした加入も、本来の目的からは外れるものの、制度の性質から一考の余地はあると考えます。